オートファジー(Autophagy)とは?

最近、若返りのキーワードとしてセノリティクス と、オートファジー という単語が使われます。いわゆるオートファジー(Autophagy)とは、細胞が自分自身の「不要物・老廃物・壊れた部品」を分解して再利用する、生存のための自己クリーニングシステム のことです。

“細胞内の大掃除”をして細胞の若さと機能を保つ仕組みです。


オートファジーで何が起きているのか?

細胞の中では毎日つねに「壊れたタンパク質」「傷んだミトコンドリア」「使い終わった代謝物」が発生します。これらが溜まると細胞は機能低下=老化へ向かいます。細胞は次のようなプロセスを持っています:

  1. ゴミを袋にまとめる
    → オートファゴソーム(袋)ができる

  2. 袋をリソソームに届ける
    → リソソームは“分解工場”

  3. 分解・再利用
    → アミノ酸や脂肪酸として再利用される(リサイクル)


オートファジーがしていること

  • 壊れたミトコンドリアの除去(ミトファジー)

  • 不良タンパク質の除去(凝集体、アミロイドなど)

  • 代謝の正常化

  • エネルギー不足時(断食時)のリサイクル


どんな時に活性化する?

  • 断食(空腹状態)

  • 糖質制限

  • 運動

  • 低インスリン状態

  • 低アミノ酸状態(特にロイシン)

  • 空腹状態(絶食/断食)

インスリン・アミノ酸が多いと mTOR がオンになり、
オートファジーは 停止 します。

逆に、絶食時は AMPK がオンになり、
オートファジーが 強く働きます


期待される効果

  • 細胞の若返り(クリーニング)

  • ミトコンドリア機能の改善

  • 炎症の低下

  • 代謝改善(糖代謝・脂質代謝)

  • 免疫力の改善

  • 老化速度の低下


オートファジーと老化の関係

老化細胞(senescent cells)ではオートファジー能力が落ちているため、
→ ゴミが蓄積し、
→ SASPという炎症物質を出し始め、
→ 周囲の細胞にも悪影響を与える。

そのため オートファジー活性化は“アンチエイジングの要” とされます。

オートファジー と セノリティクス の違い

特徴 オートファジー セノリティクス
目的 細胞内ゴミの除去・修復 老化細胞の直接除去
作用範囲 ほぼ全細胞 老化細胞に限定(選択的)
方法 リサイクル・リペア アポトーシス誘導
誘導方法 断食、運動、栄養制御、メトホルミン D+Q、Fisetin、EGCG、Navitoclax
効果 機能改善・炎症低下 老化細胞の急速な減少
リスク 低い(やりすぎで筋量低下) 用量次第で正常細胞も影響あり
本質 「清掃」 「撤去」

セノリティクス とオートファジー の関係性

老化細胞はオートファジーが低下していることが多い
オートファジーの低下が老化細胞の蓄積につながる

セノリティクスで老化細胞を除去すると
オートファジーが正常化し、組織が若返る
というメカニズムが示唆されている。

 つまり「オートファジーで細胞を整備し、セノリティクスで老化細胞を間引く」この二段階戦略が最も若返り効果が高いと考えられています。

 

オートファジー は断食で誘発されます。ヒトの代謝データから以下のタイムラインが最も妥当です。


断食0〜12時間:ほぼ開始せず

  • 血糖・インスリンがまだ高い

  • mTOR が ON

  • オートファジーは抑制されている

→ まだ開始しない


断食12〜16時間:軽度活性化

  • インスリン低下

  • AMPK 上昇

  • グリコーゲン枯渇が始まる

→ オートファジーが「前兆レベル」で立ち上がる

研究上はこの頃から LC3-II(オートファジーマーカー)が上がり始める。


断食16〜24時間:本格的にスイッチON

  • mTOR がほぼ“OFF”

  • AMPK が強く上昇

  • ミトファジーも開始

→ 明確にオートファジーが稼働するゾーン

💡 最も再現性の高い研究結果:
「18時間断食後にオートファジー関連遺伝子が顕著に活性化」


断食24〜48時間:ピークに近づく

  • 脂肪燃焼へ強くシフト

  • ケトン体が急増(β-HB はオートファジー促進因子)

  • ミトコンドリアの入れ替えが加速(ミトファジー)

→ オートファジーが最も強く働く領域

ただし筋分解リスクも増えるため、
48h以上は慎重に行う必要がある。


48時間以上:極めて強いがリスクも増える

  • 明確に高オートファジー状態

  • ただし筋量低下・甲状腺低下・ストレスホルモン増加のリスク

→ アンチエイジング目的では推奨されない

断食時間 オートファジーの状態
0〜12h ほぼゼロ(インスリン高)
12〜16h 軽く開始
16〜24h 本格的にON
24〜48h ピーク領域
48h〜 非常に強いがリスクも高い

オートファジーと mTOR / AMPK の関係

オートファジーの主スイッチは mTOR と AMPK の2つ。


mTOR:オートファジーのブレーキ

mTOR(特に mTORC1)は以下の条件でONになる:

  • 食後(インスリン↑)

  • アミノ酸(特にロイシン↑)

  • 高栄養状態

  • 筋トレ直後(筋タンパク合成)

mTORC1がONだと:

ULK1 がリン酸化され、オートファジーが完全に停止

つまり、
栄養がある限りオートファジーは作動しない


AMPK:オートファジーのアクセル

AMPK は「エネルギー不足センサー」。

以下の状況でON:

  • 断食

  • 運動

  • 低糖状態

  • ミトコンドリアストレス

AMPKがONになると:

  1. ULK1 を活性化 → オートファジー開始

  2. mTOR を間接的に抑制 → オートファジー加速

つまり、
AMPK = オートファジーONスイッチ


mTOR と AMPK の関係

  • mTOR が ON → オートファジー OFF

  • AMPK が ON → オートファジー ON(+mTOR抑制)

完全な逆スイッチです。

オートファジー とセノリティクス をうまく組み合わせて効果的なリバースエイジングを目指しましょう。

参考:オートファジー 誘発が報告されている成分

以下の成分が、文献で“オートファジー促進の可能性あり”と報告されているものです。ほとんどが補助的かつヒトでの明確な臨床効果・推奨量確定には至っていません。

成分 作用機序/報告 エビデンス強度 備考
レスベラトロール(Resveratrol) AMPKを活性化し、mTORを抑制→オートファジー促進の報告あり。 PMC+2サイエンスダイレクト+2 中(主に動物・細胞実験) ヒト量・安全域・長期データ少ない
ケトン体(β-ヒドロキシ酪酸等)/ケトン体サポート 低糖質・断食状態・ケトーシスでオートファジーが誘導される(栄養ストレス)ので、「ケトン体を上げる=オートファジー促進」の理論あり。 中(代謝介入ではヒトデータあり) サプリ単独で明確にオートファジー誘導と証明されたわけではない
フィセチン(Fisetin) ポリフェノールで、抗酸化・抗老化作用があり、オートファジーマーカー上昇の報告あり。 低〜中(細胞・動物モデル中心) セノリティクスとしても検討されており、作用が複数ありうる
EGCG(エピガロカテキンガレート) 緑茶カテキン。AMPK活性化・mTOR抑制傾向=オートファジー促進可能性あり。 PMC 低〜中 高用量/長期の安全性や最適量未確定
メトホルミン(薬剤だがサプリ的扱いされることも) AMPK活性化→オートファジー促進可能性あり。サイエンスダイレクト+1 中(ヒトデータありだが純粋なアンチエイジング用途では議論中) 薬剤扱いで医師管理必須
クルクミン(ターメリック由来) 酸化・炎症抑制に加え、オートファジー促進報告あり。PMC 低〜中 生体内でのバイオアベイラビリティ(吸収率)が問題
ロイシン制限(アミノ酸/栄養調整) アミノ酸(特にロイシン)が多いと mTOR 活性化 → オートファジー抑制。なので「ロイシン制限」自体が栄養戦略。サイエンスダイレクト+1 栄養バランス崩れリスクあり