オートファジー(Autophagy)とは?
最近、若返りのキーワードとしてセノリティクス と、オートファジー という単語が使われます。いわゆるオートファジー(Autophagy)とは、細胞が自分自身の「不要物・老廃物・壊れた部品」を分解して再利用する、生存のための自己クリーニングシステム のことです。
“細胞内の大掃除”をして細胞の若さと機能を保つ仕組みです。
オートファジーで何が起きているのか?
細胞の中では毎日つねに「壊れたタンパク質」「傷んだミトコンドリア」「使い終わった代謝物」が発生します。これらが溜まると細胞は機能低下=老化へ向かいます。細胞は次のようなプロセスを持っています:
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ゴミを袋にまとめる
→ オートファゴソーム(袋)ができる -
袋をリソソームに届ける
→ リソソームは“分解工場” -
分解・再利用
→ アミノ酸や脂肪酸として再利用される(リサイクル)
オートファジーがしていること
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壊れたミトコンドリアの除去(ミトファジー)
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不良タンパク質の除去(凝集体、アミロイドなど)
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代謝の正常化
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エネルギー不足時(断食時)のリサイクル
どんな時に活性化する?
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断食(空腹状態)
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糖質制限
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運動
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低インスリン状態
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低アミノ酸状態(特にロイシン)
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空腹状態(絶食/断食)
インスリン・アミノ酸が多いと mTOR がオンになり、
オートファジーは 停止 します。
逆に、絶食時は AMPK がオンになり、
オートファジーが 強く働きます。
期待される効果
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細胞の若返り(クリーニング)
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ミトコンドリア機能の改善
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炎症の低下
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代謝改善(糖代謝・脂質代謝)
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免疫力の改善
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老化速度の低下
オートファジーと老化の関係
老化細胞(senescent cells)ではオートファジー能力が落ちているため、
→ ゴミが蓄積し、
→ SASPという炎症物質を出し始め、
→ 周囲の細胞にも悪影響を与える。
そのため オートファジー活性化は“アンチエイジングの要” とされます。
オートファジー と セノリティクス の違い
| 特徴 | オートファジー | セノリティクス |
|---|---|---|
| 目的 | 細胞内ゴミの除去・修復 | 老化細胞の直接除去 |
| 作用範囲 | ほぼ全細胞 | 老化細胞に限定(選択的) |
| 方法 | リサイクル・リペア | アポトーシス誘導 |
| 誘導方法 | 断食、運動、栄養制御、メトホルミン | D+Q、Fisetin、EGCG、Navitoclax |
| 効果 | 機能改善・炎症低下 | 老化細胞の急速な減少 |
| リスク | 低い(やりすぎで筋量低下) | 用量次第で正常細胞も影響あり |
| 本質 | 「清掃」 | 「撤去」 |
セノリティクス とオートファジー の関係性
老化細胞はオートファジーが低下していることが多い
→ オートファジーの低下が老化細胞の蓄積につながる
セノリティクスで老化細胞を除去すると
→ オートファジーが正常化し、組織が若返る
というメカニズムが示唆されている。
つまり「オートファジーで細胞を整備し、セノリティクスで老化細胞を間引く」この二段階戦略が最も若返り効果が高いと考えられています。
オートファジー は断食で誘発されます。ヒトの代謝データから以下のタイムラインが最も妥当です。
断食0〜12時間:ほぼ開始せず
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血糖・インスリンがまだ高い
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mTOR が ON
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オートファジーは抑制されている
→ まだ開始しない
断食12〜16時間:軽度活性化
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インスリン低下
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AMPK 上昇
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グリコーゲン枯渇が始まる
→ オートファジーが「前兆レベル」で立ち上がる
研究上はこの頃から LC3-II(オートファジーマーカー)が上がり始める。
断食16〜24時間:本格的にスイッチON
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mTOR がほぼ“OFF”
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AMPK が強く上昇
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ミトファジーも開始
→ 明確にオートファジーが稼働するゾーン
💡 最も再現性の高い研究結果:
「18時間断食後にオートファジー関連遺伝子が顕著に活性化」
断食24〜48時間:ピークに近づく
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脂肪燃焼へ強くシフト
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ケトン体が急増(β-HB はオートファジー促進因子)
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ミトコンドリアの入れ替えが加速(ミトファジー)
→ オートファジーが最も強く働く領域
ただし筋分解リスクも増えるため、
48h以上は慎重に行う必要がある。
48時間以上:極めて強いがリスクも増える
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明確に高オートファジー状態
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ただし筋量低下・甲状腺低下・ストレスホルモン増加のリスク
→ アンチエイジング目的では推奨されない
| 断食時間 | オートファジーの状態 |
|---|---|
| 0〜12h | ほぼゼロ(インスリン高) |
| 12〜16h | 軽く開始 |
| 16〜24h | 本格的にON |
| 24〜48h | ピーク領域 |
| 48h〜 | 非常に強いがリスクも高い |
オートファジーと mTOR / AMPK の関係
オートファジーの主スイッチは mTOR と AMPK の2つ。
mTOR:オートファジーのブレーキ
mTOR(特に mTORC1)は以下の条件でONになる:
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食後(インスリン↑)
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アミノ酸(特にロイシン↑)
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高栄養状態
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筋トレ直後(筋タンパク合成)
mTORC1がONだと:
→ ULK1 がリン酸化され、オートファジーが完全に停止
つまり、
栄養がある限りオートファジーは作動しない。
AMPK:オートファジーのアクセル
AMPK は「エネルギー不足センサー」。
以下の状況でON:
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断食
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運動
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低糖状態
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ミトコンドリアストレス
AMPKがONになると:
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ULK1 を活性化 → オートファジー開始
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mTOR を間接的に抑制 → オートファジー加速
つまり、
AMPK = オートファジーONスイッチ。
mTOR と AMPK の関係
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mTOR が ON → オートファジー OFF
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AMPK が ON → オートファジー ON(+mTOR抑制)
完全な逆スイッチです。
オートファジー とセノリティクス をうまく組み合わせて効果的なリバースエイジングを目指しましょう。
参考:オートファジー 誘発が報告されている成分
以下の成分が、文献で“オートファジー促進の可能性あり”と報告されているものです。ほとんどが補助的かつヒトでの明確な臨床効果・推奨量確定には至っていません。
| 成分 | 作用機序/報告 | エビデンス強度 | 備考 |
|---|---|---|---|
| レスベラトロール(Resveratrol) | AMPKを活性化し、mTORを抑制→オートファジー促進の報告あり。 PMC+2サイエンスダイレクト+2 | 中(主に動物・細胞実験) | ヒト量・安全域・長期データ少ない |
| ケトン体(β-ヒドロキシ酪酸等)/ケトン体サポート | 低糖質・断食状態・ケトーシスでオートファジーが誘導される(栄養ストレス)ので、「ケトン体を上げる=オートファジー促進」の理論あり。 | 中(代謝介入ではヒトデータあり) | サプリ単独で明確にオートファジー誘導と証明されたわけではない |
| フィセチン(Fisetin) | ポリフェノールで、抗酸化・抗老化作用があり、オートファジーマーカー上昇の報告あり。 | 低〜中(細胞・動物モデル中心) | セノリティクスとしても検討されており、作用が複数ありうる |
| EGCG(エピガロカテキンガレート) | 緑茶カテキン。AMPK活性化・mTOR抑制傾向=オートファジー促進可能性あり。 PMC | 低〜中 | 高用量/長期の安全性や最適量未確定 |
| メトホルミン(薬剤だがサプリ的扱いされることも) | AMPK活性化→オートファジー促進可能性あり。サイエンスダイレクト+1 | 中(ヒトデータありだが純粋なアンチエイジング用途では議論中) | 薬剤扱いで医師管理必須 |
| クルクミン(ターメリック由来) | 酸化・炎症抑制に加え、オートファジー促進報告あり。PMC | 低〜中 | 生体内でのバイオアベイラビリティ(吸収率)が問題 |
| ロイシン制限(アミノ酸/栄養調整) | アミノ酸(特にロイシン)が多いと mTOR 活性化 → オートファジー抑制。なので「ロイシン制限」自体が栄養戦略。サイエンスダイレクト+1 | 中 | 栄養バランス崩れリスクあり |


