EGCG(エピガロガレートカテキン)のセノリティクス 効果
EGCG(エピガロカテキンガレート)は、緑茶に含まれる主要なカテキンであり、老化細胞(senescent cells)に対して セノリティクス(senolytic)作用 と セノモルフィック(senomorphic)作用 の両方を示す可能性があることが、近年の研究で報告されています。
用語 | 意味 | 目的 |
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セノリティクス(senolytics) | 老化細胞を選択的に除去する薬剤または作用 | 老化細胞を物理的に排除することで組織の回復を促す |
セノモルフィクス(senomorphics) | 老化細胞を生きたまま制御・改善する薬剤または作用(例:SASPの抑制) | SASPによる慢性炎症などを抑え、副作用なしに老化細胞の悪影響を減らす |
1. セノリティクス効果:老化細胞の除去
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Bcl-2/Bcl-xL経路の阻害によるアポトーシス誘導
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研究ではEGCGが、抗アポトーシス因子である Bcl-2 や Bcl-xL の発現を抑制することで、老化細胞に選択的なアポトーシス(細胞死)を誘導する作用が確認されている。
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特にヒト臍帯内皮細胞(HUVECs)などの老化モデルで、SA-β-gal陽性細胞の割合が減少した報告がある。
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2. セノモルフィック効果:老化細胞の炎症制御・表現型改善
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SASP(senescence-associated secretory phenotype)の抑制
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EGCGは、NF-κBやmTOR経路を抑制することで、老化細胞が分泌する炎症性サイトカイン(IL-6, IL-1β, TNF-αなど)を低減。
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これにより、慢性炎症(inflammaging)や周囲細胞への悪影響を軽減する。
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オートファジーの誘導による細胞環境改善
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長期的なEGCG摂取(マウスモデル)では、オートファジー誘導(LC3-II上昇)を通じて老化細胞の代謝・SASP制御に貢献することが報告されている。
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動物実験の代表例(寿命延長効果)
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18か月齢のマウスにEGCG(0.32%含有飼料)を18か月間投与した実験では:
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中位寿命が25.4%延長
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白色脂肪組織と腸のp21陽性細胞数が減少
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老化関連炎症因子(IL-6、IL-1β、TNF-α)が有意に減少した
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作用 | EGCGの関与経路 | 効果 | 主な文献 |
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セノリティクス | Bcl-2/Bcl-xL阻害、アポトーシス誘導 | 老化細胞の除去 | Aging Cell 2020 |
セノモルフィック | NF-κB/mTOR抑制、SASP制御 | 炎症抑制・老化細胞の害の軽減 | FASEB J 2020, Aging-US 2022 |
注意点と臨床的課題
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EGCGは経口ではバイオアベイラビリティが非常に低く(1–5%)、血中に高濃度を維持するのは困難。
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高濃度ではDNA損傷や酸化ストレスを増加させる可能性もあるため、用量と投与法(点滴やナノ化製剤など)の最適化が必要。
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ヒトでのセノリティクス効果を明確に評価した臨床試験は現時点で存在しない。